もちもちパンダ/

「白衣を着た薬剤師より、栄養士の方が親しみやすい」~食・薬連携という面白さ

11/15発行号の「薬局発NPOの『測定会』に企業が殺到」を書いたのは筆者だが、この認定NPO法人「健康ラボステーション」について書き切れなかった、どうしても強調したい部分をこちらに書く。このNPOに必須の管理栄養士の活躍、薬剤師との「食・薬」連携だ。

 

NPOでの管理栄養士の活躍は本誌をご覧頂きたいが、筆者も正直「管理栄養士がこれほど市民に影響力があるのか」と驚いた。計測会では管理栄養士による相談コーナーは常に満席、パイプ椅子が別途要る時もあった。30分以上話し込む熱心な参加者もいた。計測時にムスっとしていた男性が、相談後に「また来るわ!」と晴れやかな笑顔で帰っていった。リピーターの中には、管理栄養士を指名する人も。街中のイベントでスタッフが「健康チェックをやっていますよ。管理栄養士がアドバイスします」と声をかけると、「栄養士さんが教えてくれるなら」と言って立ち寄る女性もいた。一日3度の食事が、どれほど身近で誰もが興味を持つ話かということを、取材中に何度も痛感した。

 

本誌に出てきた薬剤師の男性が「白衣を着た薬剤師より、気軽に食事の相談に乗ってくれる栄養士の方が、身近なんだと思います」と素直に語ってくれたのが印象的だった。元気であれば、薬局に行く必要はない。しかし、生きていれば、誰もが食事をする。その食事内容にアドバイスしてくれる管理栄養士は、未病の一般市民からすれば、薬剤師よりよっぽど身近というのは、言われてみれば当たり前だ。そう考えたら、なぜ地域包括ケアに管理栄養士がもっと出てこないのか、不思議でならない。地域包括ケアに本気で取り組むなら、予防の観点から一般市民を巻き込む必要がある。そのために、管理栄養士、栄養士の存在は欠かせないのではないか? 誌面に出てきた調剤薬局がイベントで「おくすり相談会」をやっても人は来ないが、食事相談は一般市民から人気だそうだ。また、管理栄養士が患者の一週間分の食事をチェックしたりと、薬剤師と連携して患者の食事相談に乗ることもあるという。

 

健康ラボステーションの管理栄養士の山内利香さんは「母親向けに子どもの食育セミナー、料理教室などもやっていきたい」と、未来を担う世代に予防の観点で関わっていきたいと話す。彼女は国立大学医学部で唯一栄養学科を持つ徳島大を卒業し、病院で働いていたというユニークな経歴を持つ。山内さんの話では、徳島大の栄養学科は医学部にあることも影響してか、アカデミア色が濃かったそうだ。彼女から「分子栄養学」「代謝栄養学」などの話を聞いていると、薬学部と似た雰囲気がなくもない、と思ったりしたのは筆者が薬学に詳しくないからだろうか(筆者は社会保障専門)。薬学も栄養学も素人の筆者だが、批判を恐れず市民目線で言わせてもらうと、「医食同源」と聞くように、薬も食事も体に摂取されて影響を及ぼすという大きな意味では、共通している部分もあるはずだ。ぜひ管理栄養士にもっと活躍してもらい、市民に予防の視点を持ってもらえるよう働きかけてもらいたいと、今回の取材で強く思った。食・薬連携は、地域包括ケアでは必須のはずだ。(ぱんだ)