もちもちパンダ/

WHO、今の課題は高齢化対策

次世代医療の研究開発から産業化までを担う団体や企業が集まる「神戸医療産業都市(https://www.fbri-kobe.org/kbic/)」が19日で20年目を迎え、記念式典を行った。「神戸医療産業都市」と言われても何のことか分からない人も多いと思うが、簡単に言うと、例えば理研などの研究開発を行う団体、スパコン「京」が設置されている施設、iPS細胞を使った目の手術からリハビリまでを行うアイセンターなどがある、創薬や医療機器に関するの基礎研究から臨床研究まで幅広く行っている団体や企業の集積地だ。神戸市の人工島「ポートアイランド」にある。元々は、阪神淡路大震災からの復興の足掛かりにするため、神戸市が産官学連携で始めたものだったが、今では350の団体企業、約9000人が働く大きな地区になった。 

 特に1日に同推進機構の本庶佑理事長がノーベル生理学・医学賞を受賞したことが、この医療産業都市の“成人式”のモチベーションを大きく上げたのだろう。式典の記者会見には多くのメディアが入り、本庶氏が話す一般向け国際創薬シンポジウムには約700人が参加した。 

 本庶氏の話は他メディアが書くだろうから、筆者は恐らく誰も書かないだろう記念式典シンポジウムの出席者の一人、WHOの日本支部ともいえるWHO健康開発総合研究センターの野崎慎二郎上級顧問官の話を書く。社会保障が専門の筆者にとってはそちらの方が面白かった。 

 野崎氏の話は、『WHOの課題として、感染症対策の時代は終わり、高齢化対策に入った』という一言にまとめられると思った。野崎氏によると、20世紀まではアジアやアフリカを中心とした途上国での感染症対策が国際保健の課題だったが、ほぼ達成された。結果として見えてきたのは、彼らが生活習慣病に罹ったり、高齢化することで医療費が急激に増えるという課題だった。日本は年々人口が減っているが、世界では逆に増えているため、世界的に医療費が増額することになる。すると、国際保健の課題は「医療提供体制や医療の質を拡大し、その費用をどう確保するか」(野崎氏)ということになる。言い方は悪いが、これまで死なざるを得なかった人が生きられるようになった分の、医療介護にまつわる「ヒト・モノ・カネ・クオリティ」のバランスをどうするかがWHOの目下の課題、というわけだ。WHOの中では最重要コンセプトの「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:Universal Health Coverage)」と言われているらしい(英語にすると、なぜか聞こえが良くなる気がする)。野崎氏は「世の中の人々が適切な医療を適切な費用で、誰もが享受できる社会を作るという非常に究極的な目標」と語ったが、真に「究極的な目標」だと思う。

 野崎氏は、高齢化で世界トップを走る日本が「医療供給体制の質と量をどう確保していくか、質と量が拡大していく中でそれに応じたどう費用を確保していくのか、高齢者にどういうケアをするのか。その成果を計っていくモニタリングツールを世に出し、イノベーションのグッドケースモデルを世に出さないといけない。そういったことを研究の中心に据えている」と話した。正直なところ、一体どうやってこんな大掛かりな話を形にするのだろうと思わざるを得ない(もしかしてWHO日本支部として何か出さないといけないというプレッシャーもあるのだろうか、と筆者は勝手に想像した)。 

ちなみに野崎氏は言わなかったが、筆者はWHOで働くスタッフから、「世界が高齢化する中で大きな課題は認知症」と、認知症対策に力を入れていると聞いたことがある。認知症は、日本だけでなく世界的な課題なのだ。 

 あまり知られていないが、WHO健康開発総合研究センターは約20年前から神戸市にあり、政策研究などを行っている。今、WHO健康開発総合研究センターと神戸市と神戸大学が協同して、認知症に関する研究をしているそうだ。市内の70歳以上の高齢者に対し、健康チェック等を行い、どのような活動が認知症予防に効果があるのかを調べているという。ぜひ今度、取材してみたい。(梨)