もちもちパンダ/

多剤併用害悪を実証 ―「まるめ」減薬の老健患者が元気に!

 ある老人保健施設老健…病院で急性期医療の終わった患者が在宅復帰のためにリハビリをする介護保険施設。入居は3か月までという決まりが「一応」ある)の相談員から面白い話を聞いた。老健は介護報酬が“まるめ”なので、運営側としてはなるべく処方薬を減らして出費を抑えたい。そのために、退院時に飲んでいた薬が減薬されることがあるそうだ。それってマズイんじゃないの? と思いそうなところだが、減薬によって認知症の患者が急に意識がはっきりして元気になったり、食欲が出たり、ふらつきが少なくなったり、リハビリに意欲を持つ患者もいたそうで、患者にとって良い影響になったケースが少なくなかったというのだ。長年その老健で働いていた相談員は、「多剤併用の害悪は、確かにあると実感するようになった」と語ってくれた。

 

“まるめ”のせいで必要な薬が飲めなくなって困ったという話は聞いたことがあったが、多剤併用の面で奏功していることがあるのかと思うと非常に興味深い。

 

 そして年々増え続ける高齢者数と社会保障費のおかげで介護保険制度も介護報酬も激しく変動している。厚労省は入院患者を在宅に返そうと躍起になっているため、病院と在宅の間の中間施設である老健には上述の話も含め、色々なことが起こっているようだ。

 

 今年度の介護報酬改定で老健はさらに在宅復帰・在宅療養支援機能を強化するための報酬体系がとられるようになり、ざっくり次の5種類に分けられた。

  • 超強化型 ②在宅強化型 ③加算型 ④基本型 ⑤その他

「在宅復帰・在宅療養支援等指標」という新たな算定要件が導入され、在宅復帰率やベッドの回転率、入所や退所前後の訪問指導割合によって点数がつけられ、点数が高いほど報酬が高くなる。最も報酬が高い「超強化型」を取ろうと思うと在宅復帰率50%以上、ベッド回転率10%以上のほか、リハビリ専門職や相談員も多めに置かねばならないなど、相当厳しい。基本型以上の報酬は上がってているものの、在宅復帰や在宅療養支援機能を持たない施設は「その他」に分類され、報酬も大きく引き下げられた。

 

 報酬改定が行われてから半年近く経ったが、個々の老健によって相当状況が違うようで面白い。ある超強化型では月に15人ほども患者が入れ替わるそうだ。一方で、月に5人も移ることができればいい方で、転院先がなく、在宅に戻ることも不可能なために長期にわたる入院を認めざるを得ない老健も多いと聞く。2009年の介護報酬改定では老健にもターミナルケア加算が新設されたこともあり、中には看取りを行うことを前面に押し出す老健もちらほら見受けられるようになってきた。「在宅復帰を目指す施設」という建前からするとおかしなことになっているわけだが、厚労省も「患者全員を在宅に返す」のは無理、ということは大方分かっているのだろう。病院と在宅の間にある施設、その中でも老健は医療と介護の中間とも言える施設でもあり、これからも多くの問題を抱えそうだ。(ぱんだ)